きみと歩く時々走る

重複障がいのある息子とのこれまでと今

聞こえる

人間、なくした機能があるとある機能が研ぎ澄まされるみたいだ。

からあげくんは歩けない頃腕力が強かったし、視力が0.0いくつの世界で生きていたからか聴力が研ぎ澄まされている。

のだと思う。

 

アニメやナレーションの声優さんや俳優さんの声を見事に聞き分け、アニメの台詞を完コピしている。

昔は彼の喋りはほぼ何かの台詞の切り貼りで、何となくその場の雰囲気や自分の感情の高ぶりや悲しみにぴったりする台詞を口にした。

自分の言葉にするとすらすら出ないのにこれだと立て板に水のごとくペラペラ口が動いた。

それがまぁ、ハードボイルドというか。

きさまや、てめぇや技の名前や。

 

苦労した。

 

そして彼のラインアイコンや待受は池田秀一さんになり、私たち夫婦は

 

だれ?このおじさん?

あ、からあげくん?

 

といきなりLINEに現れた見知らぬ顔に慌てた。

そして私は池田秀一さんの顔を覚えた。

なんなら、プリントアウトされたその写真は彼の部屋にも飾られている。

好きな声らしい。

うん、確かにカッコいいよ。

そうか、シャア様はこのかたでございますか?

視力の矯正でずいぶん見えるようになったようだが、彼はやはり未だに聴力優位の世界で生きている。

きっと少し私の世界とは違う。

テレビをつけ、スマホで電話しながら、タブレットで音楽を聴き、時にゲームまでしている息子の世界は私には少し騒がしすぎて情報処理できない。


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